油脂合成能の向上への取り組み

 植物油脂は食用、工業用として世界中で利用されています。近年では、環境に優しい原料として注目され、バイオ燃料や生分解性プラステックの材料として用いられており、植物油脂の需要は年々拡大しています。油を搾る目的で栽培される多くの油糧作物は種子に油を蓄積するため、種子中の油脂含量を高めることが求められています。私達がこれまでに明らかにしてきた、種子貯蔵タンパク質や油脂の蓄積機構の知見 (図4) を利用して、油脂合成能を向上させた植物の作製に挑戦しています。

図 4. シロイヌナズナ種子登熟における油脂とタンパク質の合成時期

シロイヌナズナ種子が登熟に際には、まず油脂合成が開始され、その後にタンパク質合成が始まる。


 上記の解析結果から、油脂の合成期間を延長させることにより、種子に蓄積する油脂含量を増加させることができるのではないかと考えました。そのために、種子登熟において中期から後期にかけて遺伝子を発現させることが可能なFUSCA3プロモーターを用いて、油脂合成系を活性化させる転写因子WRINKLED1を発現させる形質転換体を作製しました (図5)。

図 5.油脂合成期間を延長させたシロイヌナズナにおける種子の増大

野生型 (Col) において、FUS3プロモーター下でWRI1遺伝子を発現させると、油脂含量が140%増加しただけでなく、種子も増大した (FUS3p::WRI1/Col)。さらに、貯蔵タンパク質の蓄積を抑制させた植物を用いると、油脂含量は170%増加し、さらに種子は大きくなることが明らかとなった (FUS3p::WRI1/12s1.4)。バーは 0.1 mm。

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